
2025-01-16
犬と猫の肝臓病について|症状から治療まで【獣医師が解説】

大田区、下丸子、矢口を中心に幅広い動物の診療を行う「まるこ未来動物病院」です。
愛犬や愛猫がなんとなく元気をなくしていたり、食欲が低下している、下痢や軟便が続いているといったことはありませんか?これらの症状は肝臓病によって引き起こされていることがあります。肝臓病は放置すると進行し、治療が難しくなることがあるため、早期の発見と治療が重要です。
今回は犬と猫、それぞれの特徴も含め、肝臓病について詳しく解説します。
肝臓の働きは多岐にわたりますが、中でも大きな役割は、胆汁を分泌して食べ物を消化する、吸収した栄養を分解・合成して蓄えるといった消化器官としての役割です。また、体外から侵入した毒素や体内で発生するアンモニアなどの有害物質を解毒して排泄する役割もあります。
・下痢や軟便:腸の機能が肝臓と密接に関わっているため、消化不良や便の異常が現れることがあります。
・嘔吐:食べた物を消化できず、吐き戻すことがあります。
・元気や食欲の低下:普段より活動量が減り、食事への興味が薄れることがあります。
・黒色便:肝臓の影響で消化管からの出血が起こり、タール状の黒い便が見られる場合があります。
・体重減少:栄養の吸収が妨げられることで痩せてくることがあります。
・黄疸:皮膚や粘膜、目の白い部分が黄色くなることがあり、比較的進行した肝機能障害を示します。
・腹水:お腹に液体が溜まり、体全体がむくんで見える場合があります。
また、重症化すると痙攣などの神経症状が現れることもあります。
犬と猫のリンパ腫についてはこちらで解説しています
また、胆嚢炎や胆石症といった胆嚢の病気が波及する場合や、胆管(肝臓と腸をつなぐ管)が詰まってしまう場合もあります。さらに、膵炎などの膵臓疾患が影響を及ぼすことも肝臓病の一因となります。
加えて、人間用の薬や金属など、犬や猫にとって有害な物質が肝臓病を引き起こすことがあります。これらの物質が体内で分解・排泄される際、肝臓に大きな負担をかけるため、取り扱いには細心の注意が必要です。
また、犬と猫それぞれに、以下のような特徴的な原因が存在します。
レプトスピラ感染症についてはこちらで解説しています
猫では、「肝リピドーシス(脂肪肝)」が特に注意を要する疾患です。この病気は食欲低下をきっかけに急速に進行し、命に関わる状態に至ることがあります。特に肥満の猫に多く見られ、長時間食べない状態が続いた場合は早急な受診が必要です。
さらに、猫はアロマオイルに含まれる特定の成分を分解する酵素を持っていないため、アロマオイルが原因で肝臓が障害を受けるケースも報告されています。
食事療法では、症状や状態に合わせて、肝臓への負担を減らすために低脂肪のフードを使用したり、アミノ酸の補給など栄養の摂取量を適切に調整することが一般的です。必要に応じて消化を助ける薬や下痢を抑える薬も併用し、消化吸収をサポートします。
猫の肝リピドーシスでは、持続的な点滴と栄養補給が必要(ご飯を食べない、食べても吐いてしまう場合には、カテーテルで栄養補給を行います)になる場合も多く、入院治療が提案されることもあります。
特に猫の場合、食欲が低下すると急速に肝リピドーシスを発症することがあるため、48時間以上食べない状態が続いた場合は動物病院を受診してください。
なんとなく元気がないといった些細な変化でも、早めに受診することで肝臓病の早期発見につながる可能性があります。愛犬・愛猫の健康を守るため、少しでも気になる症状があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
■関連する記事はこちらです
犬や猫に嘔吐や下痢が見られたら|SOSサインを見逃さないで
東京都大田区下丸子で、犬・猫・フェレット・ウサギ・小動物・鳥・魚まで、幅広い動物の診療を行っている【まるこ未来動物病院】
当院の診療案内はこちら
愛犬や愛猫がなんとなく元気をなくしていたり、食欲が低下している、下痢や軟便が続いているといったことはありませんか?これらの症状は肝臓病によって引き起こされていることがあります。肝臓病は放置すると進行し、治療が難しくなることがあるため、早期の発見と治療が重要です。
今回は犬と猫、それぞれの特徴も含め、肝臓病について詳しく解説します。
肝臓病とは
肝臓が何らかの原因で障害を受けた状態を肝臓病と呼びます。肝臓の働きは多岐にわたりますが、中でも大きな役割は、胆汁を分泌して食べ物を消化する、吸収した栄養を分解・合成して蓄えるといった消化器官としての役割です。また、体外から侵入した毒素や体内で発生するアンモニアなどの有害物質を解毒して排泄する役割もあります。
主な症状
肝臓病の症状は非常に多岐にわたり、明確に肝臓病と特定できる特徴的なものが少ないため、注意深く観察することが大切です。以下は、肝臓病でよく見られる症状です。・下痢や軟便:腸の機能が肝臓と密接に関わっているため、消化不良や便の異常が現れることがあります。
・嘔吐:食べた物を消化できず、吐き戻すことがあります。
・元気や食欲の低下:普段より活動量が減り、食事への興味が薄れることがあります。
・黒色便:肝臓の影響で消化管からの出血が起こり、タール状の黒い便が見られる場合があります。
・体重減少:栄養の吸収が妨げられることで痩せてくることがあります。
・黄疸:皮膚や粘膜、目の白い部分が黄色くなることがあり、比較的進行した肝機能障害を示します。
・腹水:お腹に液体が溜まり、体全体がむくんで見える場合があります。
また、重症化すると痙攣などの神経症状が現れることもあります。
主な原因
肝臓病の原因は多岐にわたりますが、犬と猫に共通する一般的な原因としては、感染症や肝臓に発生する腫瘍、あるいはリンパ腫や肥満細胞腫などの腫瘍が肝臓に転移するケースが挙げられます。犬と猫のリンパ腫についてはこちらで解説しています
また、胆嚢炎や胆石症といった胆嚢の病気が波及する場合や、胆管(肝臓と腸をつなぐ管)が詰まってしまう場合もあります。さらに、膵炎などの膵臓疾患が影響を及ぼすことも肝臓病の一因となります。
加えて、人間用の薬や金属など、犬や猫にとって有害な物質が肝臓病を引き起こすことがあります。これらの物質が体内で分解・排泄される際、肝臓に大きな負担をかけるため、取り扱いには細心の注意が必要です。
また、犬と猫それぞれに、以下のような特徴的な原因が存在します。
<犬特有の原因>
ワクチン接種を受けていないと、「犬伝染性肝炎」や「レプトスピラ症」といったウイルス性の肝臓病にかかるリスクが高まります。また、生まれつき血管に異常がある「門脈シャント」は、犬に比較的多く見られる病気です。この病気では、門脈という血液の通り道が正常に機能せず、毒素が解毒されないまま体内を巡ることによってさまざまな健康問題が引き起こされます。レプトスピラ感染症についてはこちらで解説しています
<猫特有の原因>
猫では、「肝リピドーシス(脂肪肝)」が特に注意を要する疾患です。この病気は食欲低下をきっかけに急速に進行し、命に関わる状態に至ることがあります。特に肥満の猫に多く見られ、長時間食べない状態が続いた場合は早急な受診が必要です。さらに、猫はアロマオイルに含まれる特定の成分を分解する酵素を持っていないため、アロマオイルが原因で肝臓が障害を受けるケースも報告されています。
診断方法
肝臓病の診断には、症状の聞き取りや血液検査、レントゲン検査、エコー検査、肝生検、CT検査といった画像診断を組み合わせて行います。これにより、肝臓やその周辺の状態を総合的に評価し、適切な治療計画を立てます。治療方法
肝臓病の治療法は原因や症状によって異なります。例えば、腫瘍や門脈シャント、胆管閉塞の場合は外科治療が必要なこともありますが、多くの場合、薬物療法と食事療法を併用した症状の緩和が中心となります。食事療法では、症状や状態に合わせて、肝臓への負担を減らすために低脂肪のフードを使用したり、アミノ酸の補給など栄養の摂取量を適切に調整することが一般的です。必要に応じて消化を助ける薬や下痢を抑える薬も併用し、消化吸収をサポートします。
猫の肝リピドーシスでは、持続的な点滴と栄養補給が必要(ご飯を食べない、食べても吐いてしまう場合には、カテーテルで栄養補給を行います)になる場合も多く、入院治療が提案されることもあります。
予防と日常のケア
肝臓病の原因は多岐にわたるため、確実な予防法はありませんが、いくつかの注意点があります。まず、肥満を避け、適度な運動をさせることが重要です。また、ストレスを軽減し、健康的な生活環境を整えることも大切です。特に猫の場合、食欲が低下すると急速に肝リピドーシスを発症することがあるため、48時間以上食べない状態が続いた場合は動物病院を受診してください。
まとめ
犬や猫の肝臓病は、初期には目立った症状が見られないことも多く、気づいた時には進行していることも少なくありません。早期発見と早期治療が回復への鍵となるため、定期的な健康診断を受けることが重要です。なんとなく元気がないといった些細な変化でも、早めに受診することで肝臓病の早期発見につながる可能性があります。愛犬・愛猫の健康を守るため、少しでも気になる症状があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
■関連する記事はこちらです
犬や猫に嘔吐や下痢が見られたら|SOSサインを見逃さないで
東京都大田区下丸子で、犬・猫・フェレット・ウサギ・小動物・鳥・魚まで、幅広い動物の診療を行っている【まるこ未来動物病院】
当院の診療案内はこちら