2025-06-02
【獣医師が解説】愛犬が突然ふらつく、頭を傾ける…それ「前庭疾患」かもしれません

大田区、下丸子、矢口を中心に幅広い動物の診療を行う「まるこ未来動物病院」です。
愛犬が突然ふらついたり、頭を傾けたりする様子を見て、不安に駆られた経験はありませんか?「もしかして大きな病気なのでは…」と心配になる飼い主様も多いかと思います。
こうした症状の原因のひとつに「前庭疾患」と呼ばれる病気があります。これは平衡感覚をつかさどる器官に異常が起こることで、バランスを保てなくなる病気です。
今回は、犬の前庭疾患について、症状の特徴、診断方法、治療の進め方、ご家庭でのケアまで詳しく解説します。
前庭器官は、身体の向きや動き、重力の変化を感知し、平衡感覚をコントロールしています。ここに問題が起こると、ふらつきや頭の傾き、歩行の異常などの症状があらわれます。
<主な原因>
前庭疾患を引き起こす原因はさまざまです。代表的なものとして以下が挙げられます。
・特発性前庭症候群(とくに高齢犬に多い)
・中耳炎・内耳炎などの耳の感染症
・脳腫瘍や脳炎
・甲状腺機能の低下
・頭部の外傷
また、チワワやキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなど、一部の犬種では遺伝的に前庭疾患を起こしやすいともいわれています。
<特徴的な症状>
前庭疾患でよく見られる症状には、次のようなものがあります。
・頭を傾ける(斜頸)
・ふらつく、転倒する
・同じ方向にぐるぐる回るような歩き方(旋回運動)
・眼球が左右または上下に細かく動く(眼振)
これらの症状が強く出ると、自力で立ち上がることができない状態になることもあります。
<症状は左右どちらかに偏ることが多い>
多くの場合、症状は左右どちらか一方に偏って現れます。たとえば、常に右側に頭を傾ける、右側に倒れ込むなど、前庭器官の障害が起きている側の方向に傾きや偏りが出るのが特徴です。
<「末梢性」と「中枢性」の違い>
前庭疾患には大きく分けて次の2種類があります。
・末梢性前庭疾患:内耳〜前庭神経など、耳に近い部分の異常が原因。多くの場合、命に関わることはなく、回復も見込めます。
・中枢性前庭疾患:脳幹など中枢神経に問題があるケース。背景に深刻な病気(脳腫瘍・脳炎など)が隠れていることもあり、慎重な対応が必要です。
この区別は外見の症状だけでは難しいため、必ず獣医師の診察と検査を受けることが大切です。
<動画での記録がおすすめ>
ふらつきや眼振などの症状は、診察時には見られないこともあるため、症状が出ている様子をスマートフォンなどで撮影しておくと、獣医師にとって重要な判断材料となります。
▼神経学的検査で全体の状態を確認
前庭疾患の診断では、まず獣医師による神経学的検査が行われます。歩行の様子や姿勢、頭の傾き、眼振などの観察を通じて、神経系に異常があるかどうかを総合的に判断します。
▼精密検査でさらに詳しく調べる
次に、耳の検査や血液検査を行い、感染症や内分泌の異常がないかを調べます。
必要に応じて、レントゲン、CT、MRIといった画像検査を行うこともあり、とくに中枢性前庭疾患の疑いがある場合には精密検査が欠かせません。
▼他の病気との鑑別
前庭疾患のような症状は、てんかん、脳腫瘍、脳炎、内耳のがんなどでも見られることがあるため、それらの病気との区別(鑑別診断)が非常に重要です。
高齢犬で突然発症し、他に大きな異常が見つからない場合は、「特発性前庭症候群」と診断されるケースもあります。
<原因が特定できた場合の治療>
治療法は、原因となる病気によって異なります。
・中耳炎や内耳炎が原因の場合:抗生物質などによる治療
・甲状腺機能低下症:ホルモンの補充治療
・脳腫瘍や炎症:専門的な治療や対症療法
原因を特定できた場合には、それに応じた適切な治療を速やかに行うことが大切です。
<特発性前庭症候群の治療>
特発性前庭症候群は、はっきりとした原因が見つからないケースで、とくに高齢の犬に多く見られます。
この場合は、吐き気やふらつきを軽減するための対症療法(制吐剤・抗炎症薬・ビタミン剤など)を行い、自然回復を待つかたちとなります。
<回復の経過と注意点>
多くの犬は、発症から数日〜数週間で症状が徐々に改善し、日常生活に戻れるケースも少なくありません。ただし、頭の傾きが後遺症として残ることがあり、再発することもあります。
症状が改善しても、経過観察や再発予防のための動物病院での定期的なチェックは継続するようにしましょう。
<安全な生活環境を整える>
ふらつきがあると、転倒やケガのリスクが高まります。
・段差をなくす
・滑りにくいマットを敷く
・サークルなどで動きを制限する
といった工夫で、安心して過ごせる空間を整えましょう。
<食事と水分の管理>
食事や水の器は、頭の傾きやふらつきに合わせて高さや位置を調整するのがポイントです。
脱水を防ぐためにも、こまめな水分補給を意識してください。
<排泄と軽いリハビリ>
排泄時のふらつきが心配な場合は、安定した場所で支えてあげると安心です。
また、可能であれば軽いバランス運動やマッサージなどのリハビリを取り入れると、回復のサポートにつながります。
<急変時はすぐに病院へ>
症状が急に悪化したり、意識がぼんやりしている、立ち上がれない、呼吸が乱れているなどの異常が見られた場合は、すぐに動物病院へ連絡しましょう。早めの対応が命を守ることにつながります。
多くの前庭疾患は、適切な診断と治療によって回復が見込める病気です。特に高齢犬に見られる特発性前庭症候群では、時間の経過とともに症状が落ち着いていくケースも多く、過度な心配は不要な場合もあります。
ただし、似たような症状が重篤な病気のサインであることもあるため、動物病院での診察を受けることを強くおすすめします。また、定期的な健康チェックも、愛犬の元気な毎日を守る大切な習慣です。
当院では、前庭疾患をはじめとする神経系のトラブルにも対応しています。気になる症状が見られた際は、どうぞお気軽にご相談ください。
東京都大田区下丸子で、犬・猫・フェレット・ウサギ・小動物・鳥・魚まで、幅広い動物の診療を行っている【まるこ未来動物病院】
▶ 当院の診療案内はこちら
初めての方はこちらもチェック!
▶ よくあるご質問(FAQ)を読む
愛犬が突然ふらついたり、頭を傾けたりする様子を見て、不安に駆られた経験はありませんか?「もしかして大きな病気なのでは…」と心配になる飼い主様も多いかと思います。
こうした症状の原因のひとつに「前庭疾患」と呼ばれる病気があります。これは平衡感覚をつかさどる器官に異常が起こることで、バランスを保てなくなる病気です。
今回は、犬の前庭疾患について、症状の特徴、診断方法、治療の進め方、ご家庭でのケアまで詳しく解説します。
犬の前庭疾患とは?
前庭疾患とは、耳の奥にある「前庭器官」という部分に異常が起き、体のバランスをうまく保てなくなる病気です。前庭器官は、身体の向きや動き、重力の変化を感知し、平衡感覚をコントロールしています。ここに問題が起こると、ふらつきや頭の傾き、歩行の異常などの症状があらわれます。
<主な原因>
前庭疾患を引き起こす原因はさまざまです。代表的なものとして以下が挙げられます。
・特発性前庭症候群(とくに高齢犬に多い)
・中耳炎・内耳炎などの耳の感染症
・脳腫瘍や脳炎
・甲状腺機能の低下
・頭部の外傷
また、チワワやキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなど、一部の犬種では遺伝的に前庭疾患を起こしやすいともいわれています。
主な症状と見分け方
前庭疾患には、ほかの病気とは異なる特徴的な症状があります。ここでは代表的なサインと、その見分け方をご紹介します。<特徴的な症状>
前庭疾患でよく見られる症状には、次のようなものがあります。
・頭を傾ける(斜頸)
・ふらつく、転倒する
・同じ方向にぐるぐる回るような歩き方(旋回運動)
・眼球が左右または上下に細かく動く(眼振)
これらの症状が強く出ると、自力で立ち上がることができない状態になることもあります。
<症状は左右どちらかに偏ることが多い>
多くの場合、症状は左右どちらか一方に偏って現れます。たとえば、常に右側に頭を傾ける、右側に倒れ込むなど、前庭器官の障害が起きている側の方向に傾きや偏りが出るのが特徴です。
<「末梢性」と「中枢性」の違い>
前庭疾患には大きく分けて次の2種類があります。
・末梢性前庭疾患:内耳〜前庭神経など、耳に近い部分の異常が原因。多くの場合、命に関わることはなく、回復も見込めます。
・中枢性前庭疾患:脳幹など中枢神経に問題があるケース。背景に深刻な病気(脳腫瘍・脳炎など)が隠れていることもあり、慎重な対応が必要です。
この区別は外見の症状だけでは難しいため、必ず獣医師の診察と検査を受けることが大切です。
<動画での記録がおすすめ>
ふらつきや眼振などの症状は、診察時には見られないこともあるため、症状が出ている様子をスマートフォンなどで撮影しておくと、獣医師にとって重要な判断材料となります。
診断方法|原因を見極めるために必要な検査
前庭疾患の診断には、神経学的な評価と各種検査による総合的な判断が欠かせません。▼神経学的検査で全体の状態を確認
前庭疾患の診断では、まず獣医師による神経学的検査が行われます。歩行の様子や姿勢、頭の傾き、眼振などの観察を通じて、神経系に異常があるかどうかを総合的に判断します。
▼精密検査でさらに詳しく調べる
次に、耳の検査や血液検査を行い、感染症や内分泌の異常がないかを調べます。
必要に応じて、レントゲン、CT、MRIといった画像検査を行うこともあり、とくに中枢性前庭疾患の疑いがある場合には精密検査が欠かせません。
▼他の病気との鑑別
前庭疾患のような症状は、てんかん、脳腫瘍、脳炎、内耳のがんなどでも見られることがあるため、それらの病気との区別(鑑別診断)が非常に重要です。
高齢犬で突然発症し、他に大きな異常が見つからない場合は、「特発性前庭症候群」と診断されるケースもあります。
治療法と経過|原因に応じた対応が基本です
治療は、原因がはっきりしているかどうかで進め方が大きく変わります。ここでは代表的な治療法と、回復までの流れについてご紹介します。<原因が特定できた場合の治療>
治療法は、原因となる病気によって異なります。
・中耳炎や内耳炎が原因の場合:抗生物質などによる治療
・甲状腺機能低下症:ホルモンの補充治療
・脳腫瘍や炎症:専門的な治療や対症療法
原因を特定できた場合には、それに応じた適切な治療を速やかに行うことが大切です。
<特発性前庭症候群の治療>
特発性前庭症候群は、はっきりとした原因が見つからないケースで、とくに高齢の犬に多く見られます。
この場合は、吐き気やふらつきを軽減するための対症療法(制吐剤・抗炎症薬・ビタミン剤など)を行い、自然回復を待つかたちとなります。
<回復の経過と注意点>
多くの犬は、発症から数日〜数週間で症状が徐々に改善し、日常生活に戻れるケースも少なくありません。ただし、頭の傾きが後遺症として残ることがあり、再発することもあります。
症状が改善しても、経過観察や再発予防のための動物病院での定期的なチェックは継続するようにしましょう。
ご家庭でのケアとサポート
治療と並行して、ご家庭でのケアも愛犬の回復を支える大切な役割を担っています。<安全な生活環境を整える>
ふらつきがあると、転倒やケガのリスクが高まります。
・段差をなくす
・滑りにくいマットを敷く
・サークルなどで動きを制限する
といった工夫で、安心して過ごせる空間を整えましょう。
<食事と水分の管理>
食事や水の器は、頭の傾きやふらつきに合わせて高さや位置を調整するのがポイントです。
脱水を防ぐためにも、こまめな水分補給を意識してください。
<排泄と軽いリハビリ>
排泄時のふらつきが心配な場合は、安定した場所で支えてあげると安心です。
また、可能であれば軽いバランス運動やマッサージなどのリハビリを取り入れると、回復のサポートにつながります。
<急変時はすぐに病院へ>
症状が急に悪化したり、意識がぼんやりしている、立ち上がれない、呼吸が乱れているなどの異常が見られた場合は、すぐに動物病院へ連絡しましょう。早めの対応が命を守ることにつながります。
まとめ
愛犬が突然ふらついたり、頭を傾けたりする様子がみられたときは、前庭疾患の可能性を考えながら、落ち着いて行動することが大切です。多くの前庭疾患は、適切な診断と治療によって回復が見込める病気です。特に高齢犬に見られる特発性前庭症候群では、時間の経過とともに症状が落ち着いていくケースも多く、過度な心配は不要な場合もあります。
ただし、似たような症状が重篤な病気のサインであることもあるため、動物病院での診察を受けることを強くおすすめします。また、定期的な健康チェックも、愛犬の元気な毎日を守る大切な習慣です。
当院では、前庭疾患をはじめとする神経系のトラブルにも対応しています。気になる症状が見られた際は、どうぞお気軽にご相談ください。
東京都大田区下丸子で、犬・猫・フェレット・ウサギ・小動物・鳥・魚まで、幅広い動物の診療を行っている【まるこ未来動物病院】
▶ 当院の診療案内はこちら
初めての方はこちらもチェック!
▶ よくあるご質問(FAQ)を読む



