2025-10-10
犬に多い甲状腺機能低下症|元気がないときに疑うべき病気とは

大田区、下丸子、矢口を中心に幅広い動物の診療を行う「まるこ未来動物病院」です。
「最近、うちの子が寝てばかりいる」「ごはんの量は変わらないのに体重が増えてきた」
そんな日常の小さな変化を感じたことはありませんか?
加齢のせいと見過ごされがちな症状ですが、犬では「甲状腺機能低下症」という病気が隠れていることがあります。甲状腺ホルモンは体全体の代謝をコントロールする大切な物質で、不足すると心身にさまざまな影響を及ぼします。
今回は、犬の甲状腺機能低下症の特徴と治療のポイントについてお伝えします。
犬では中〜高齢での発症が多く、特にゴールデン・レトリーバー、柴犬、ダックスフンド、ビーグルといった犬種でよくみられます。ホルモンが不足するとエネルギー代謝が落ち、活動性の低下や皮膚・毛並みの悪化、精神面への影響が表れてきます。
・元気消失・活動性の低下
散歩に行きたがらない、休みがちになる、寝ている時間が増える
・体重増加
食事や運動量が変わらないのに太ってくる
・皮膚・被毛のトラブル
毛がパサつく、左右対称の脱毛、皮膚の乾燥やフケ
・その他の症状
寒がりになる、顔がむくむ、動作が鈍くなる
これらは「年齢のせい」「体質だから」と思われがちですが、実は病気のサインであることがあります。さらに症状が曖昧で、他の病気と区別しにくい点がこの病気の特徴です。
<血液検査でホルモンの量を確認>
診断の基本は血液検査です。血液中の甲状腺ホルモンの量を調べることで、体が必要なホルモンを十分につくれているかを確認します。具体的には以下の数値を測定します。
・T4(総サイロキシン):甲状腺から分泌される代表的なホルモン
・fT4(遊離サイロキシン):実際に体内で働いているホルモンの量
・TSH(甲状腺刺激ホルモン):脳から甲状腺に「もっとホルモンを出して」と指令を出すホルモン
これらを組み合わせて測定することで、ホルモンのバランスを多角的に評価します。
<他の病気との区別が大切>
甲状腺機能低下症の症状はとても曖昧で、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)や糖尿病、腎臓病など、ほかの病気でも似た症状が出ることがあります。そのため、正確な診断には鑑別診断(複数の病気を見分けること)が欠かせません。必要に応じて、追加の血液検査やエコー検査なども行い、総合的に判断します。
犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)についてはこちらで解説しています
犬と猫の糖尿病についてはこちらで解説しています
<セカンドオピニオンについて>
診断や治療方針について不安を感じたとき、セカンドオピニオンを希望される飼い主様も少なくありません。当院ではそのようなご相談も歓迎しており、必要に応じて検査結果の共有や丁寧な説明を行っています。飼い主様がしっかり理解・納得して治療に臨めることを何より大切にしています。
治療と長期管理
甲状腺機能低下症の治療は、不足しているホルモンを薬で補うことが基本です。専用の甲状腺ホルモン製剤を毎日飲ませることで、体のバランスを整えます。治療は一度で終わるものではなく、生涯にわたって続けていくことが基本となります。
ただし、薬の量は犬の体格や症状によって異なります。効きすぎても効かなすぎても体に負担がかかるため、定期的な血液検査でホルモンの値を確認しながら、最適な投薬量を調整することが大切です。
<治療後に見られるうれしい変化>
治療を始めてから1〜2週間で、
「散歩にまた元気よく行くようになった」
「寝てばかりいた子が活発になった」
といった変化を実感される飼い主様も多いです。毛並みや皮膚の状態は時間がかかりますが、数ヶ月かけて徐々に改善していきます。
<長く付き合う病気だからこそ>
薬を自己判断でやめてしまうと、症状が再び悪化してしまうだけでなく、体に大きな負担をかけてしまいます。そのため、獣医師と一緒に二人三脚で管理していくことが欠かせません。
また、飼い主様が普段の生活で気づくちょっとした変化は、治療経過を判断するうえでとても重要なヒントになります。「よく食べるようになった」「寒がらなくなった」など、気づいたことはぜひ獣医師にお伝えください。
しかし、適切な検査を行えば確実に診断でき、治療を続けることで多くの犬が再び元気を取り戻せます。実際に「年齢のせいだと思っていたけれど、薬を飲み始めたら見違えるように元気になった」と喜ばれる飼い主様も少なくありません。
大切なのは「仕方がない」と諦めずに一度ご相談いただくことです。早期発見と継続的な管理によって、愛犬が健やかな暮らしを取り戻すことにつながります。当院では、飼い主様との丁寧なコミュニケーションを大切にし、一緒に治療方針を考えながら、長期的な健康管理をサポートしています。
■関連する記事はこちらです
【下丸子の獣医師が解説】犬・猫の年齢別健康診断|症状が出る前に気づく“予防医療”のすすめ
東京都大田区下丸子で、犬・猫・フェレット・ウサギ・小動物・鳥・魚まで、幅広い動物の診療を行っている【まるこ未来動物病院】
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「最近、うちの子が寝てばかりいる」「ごはんの量は変わらないのに体重が増えてきた」
そんな日常の小さな変化を感じたことはありませんか?
加齢のせいと見過ごされがちな症状ですが、犬では「甲状腺機能低下症」という病気が隠れていることがあります。甲状腺ホルモンは体全体の代謝をコントロールする大切な物質で、不足すると心身にさまざまな影響を及ぼします。
今回は、犬の甲状腺機能低下症の特徴と治療のポイントについてお伝えします。
犬の甲状腺機能低下症とは
甲状腺は首の前側にある小さな臓器で、代謝や体温調節、皮膚や被毛の維持などに関わるホルモンを分泌しています。これらのホルモンが不足している状態が「甲状腺機能低下症」です。犬では中〜高齢での発症が多く、特にゴールデン・レトリーバー、柴犬、ダックスフンド、ビーグルといった犬種でよくみられます。ホルモンが不足するとエネルギー代謝が落ち、活動性の低下や皮膚・毛並みの悪化、精神面への影響が表れてきます。
症状の特徴
甲状腺機能低下症の厄介な点は、症状が目立ちにくく、日常の変化として見過ごされやすいことです。その中でも飼い主様が比較的気づきやすいサインには次のようなものがあります。・元気消失・活動性の低下
散歩に行きたがらない、休みがちになる、寝ている時間が増える
・体重増加
食事や運動量が変わらないのに太ってくる
・皮膚・被毛のトラブル
毛がパサつく、左右対称の脱毛、皮膚の乾燥やフケ
・その他の症状
寒がりになる、顔がむくむ、動作が鈍くなる
これらは「年齢のせい」「体質だから」と思われがちですが、実は病気のサインであることがあります。さらに症状が曖昧で、他の病気と区別しにくい点がこの病気の特徴です。
診断と鑑別の重要性
犬の甲状腺機能低下症は、加齢や肥満と勘違いされて見逃されることが少なくありません。一方で、正しく検査を行えば診断できる病気でもあります。<血液検査でホルモンの量を確認>
診断の基本は血液検査です。血液中の甲状腺ホルモンの量を調べることで、体が必要なホルモンを十分につくれているかを確認します。具体的には以下の数値を測定します。
・T4(総サイロキシン):甲状腺から分泌される代表的なホルモン
・fT4(遊離サイロキシン):実際に体内で働いているホルモンの量
・TSH(甲状腺刺激ホルモン):脳から甲状腺に「もっとホルモンを出して」と指令を出すホルモン
これらを組み合わせて測定することで、ホルモンのバランスを多角的に評価します。
<他の病気との区別が大切>
甲状腺機能低下症の症状はとても曖昧で、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)や糖尿病、腎臓病など、ほかの病気でも似た症状が出ることがあります。そのため、正確な診断には鑑別診断(複数の病気を見分けること)が欠かせません。必要に応じて、追加の血液検査やエコー検査なども行い、総合的に判断します。
犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)についてはこちらで解説しています
犬と猫の糖尿病についてはこちらで解説しています
<セカンドオピニオンについて>
診断や治療方針について不安を感じたとき、セカンドオピニオンを希望される飼い主様も少なくありません。当院ではそのようなご相談も歓迎しており、必要に応じて検査結果の共有や丁寧な説明を行っています。飼い主様がしっかり理解・納得して治療に臨めることを何より大切にしています。
治療と長期管理
甲状腺機能低下症の治療は、不足しているホルモンを薬で補うことが基本です。専用の甲状腺ホルモン製剤を毎日飲ませることで、体のバランスを整えます。治療は一度で終わるものではなく、生涯にわたって続けていくことが基本となります。
ただし、薬の量は犬の体格や症状によって異なります。効きすぎても効かなすぎても体に負担がかかるため、定期的な血液検査でホルモンの値を確認しながら、最適な投薬量を調整することが大切です。
<治療後に見られるうれしい変化>
治療を始めてから1〜2週間で、
「散歩にまた元気よく行くようになった」
「寝てばかりいた子が活発になった」
といった変化を実感される飼い主様も多いです。毛並みや皮膚の状態は時間がかかりますが、数ヶ月かけて徐々に改善していきます。
<長く付き合う病気だからこそ>
薬を自己判断でやめてしまうと、症状が再び悪化してしまうだけでなく、体に大きな負担をかけてしまいます。そのため、獣医師と一緒に二人三脚で管理していくことが欠かせません。
また、飼い主様が普段の生活で気づくちょっとした変化は、治療経過を判断するうえでとても重要なヒントになります。「よく食べるようになった」「寒がらなくなった」など、気づいたことはぜひ獣医師にお伝えください。
まとめ
犬の甲状腺機能低下症は「なんとなく元気がない」「太りやすい」といった曖昧な症状で始まるため、見逃されやすい病気です。しかし、適切な検査を行えば確実に診断でき、治療を続けることで多くの犬が再び元気を取り戻せます。実際に「年齢のせいだと思っていたけれど、薬を飲み始めたら見違えるように元気になった」と喜ばれる飼い主様も少なくありません。
大切なのは「仕方がない」と諦めずに一度ご相談いただくことです。早期発見と継続的な管理によって、愛犬が健やかな暮らしを取り戻すことにつながります。当院では、飼い主様との丁寧なコミュニケーションを大切にし、一緒に治療方針を考えながら、長期的な健康管理をサポートしています。
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東京都大田区下丸子で、犬・猫・フェレット・ウサギ・小動物・鳥・魚まで、幅広い動物の診療を行っている【まるこ未来動物病院】
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